相談屋の独り言(2006年)
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2006年 10月29日 ・これは虫の話しですが 幼虫の頃に様々な能力を持っている虫がいます。ある虫は、水の中を自由に泳ぎ、ある虫は、土の中を自由に動き回り、ある虫は、ドンドン成長しあっという間に2倍にも3倍にもその体を大きくしていきます。 しかし、ある時その虫たちは、自分の全ての長所を捨ててしまいます。成長も土や水の中を動き回ることも出来なくなるのです。それどころか、ほとんど動けない状態になり、周りからすると死んでいるかのようです。サナギの状態です。外敵から逃げることも出来ない危険な状態です。 その状態を越えて虫たちは羽化をし、成虫になります。あるものは、空を自由に飛びまわり、あるものは、自分の何倍もの重さを持ち上げられるようになり、あるものは子孫のために巣を作る。その時、幼虫の頃の能力がまったく無くなってしまうものもいます。 私たちも、これに似た状態にたびたび遭遇します。成長どころか、外から見たらまったく動けないように見え、自分でもどうして良いか分からない状態。つらく苦しい時期です。外からも自分自身でも自分を攻撃してしまいやすい時期。この様な時は心の成長のためもがいていることが多いですね。そして、周りを攻撃してしまいやすい時期でもあります。人間は、サナギにはなれず動くこともできますから。社会的にも自分自身もサナギを許さないのでしょう。誰にでも必ずあることで、現れ方が違うだけのはずなのですが。 さて、虫たちが幼虫の能力を捨てて、危険なサナギの時期を乗り越えてまで、求める能力に意味はあるのでしょうか。幼虫時代に獲得した能力はまったくの無駄だったのでしょうか。私たちが成長を止めたかのように感じる時期に意味はあるのか。成長ってなに。過去の能力を磨き続けたほうがいいのではないか。私にも、まだ答えが出ないままです。 2006年 8月28日 ・『心とからだの健康』(健学社)2006年9月号にインタビューが載りました 学校の保健の先生向けの月刊誌の取材を受けて、「巻頭インタビューこのひとに聞く・・・」と言うページに写真付き3ページの記事をご報告します。 ***** 親子関係や友人関係など、現代社会で生きる若者は、多くの悩みを抱えている。そんな若者たちから相談を受ける心理カウンセラーが彼らに伝えたいことは…? 失敗から視野が広がることもある 罪悪感に縛りつけられる親 先生の元に寄せられる相談には、子どもに関することも多いと思います。一番多いのは、どのような相談なのでしょうか。 浅井 お母さんが子どものことを相談に来るケースが多いのですが、内容は不登校や引きこもりが大多数ですね。そのようなお母さんにいつも言うことは、「親御さんが遊んでください」という言葉です。外に出る機会を増やしたり、積極的に人と交流したりしてください、と言うんです。そのような親御さんは、罪悪感が強いので、楽しんじゃいけないと思ってしまうんですね。私のところに来るにも、このような状況にはどう対応したらいいかと、自分を分析したり心理を勉強したりして来るんですよ。 親御さんが遊んでください、と言われたお母さんは意外だと思うのですが、どのような反応が返ってきますか。 浅井 いきなり言ってものみ込めないので、最初から言うことはあまりないですね。段階を追って少しずつ説明するとわかってきます。ただ、それが行動につながるかは別で、わかっているけどできない、という感じですね。 引きこもりは長ければ長いほど難しいので、親御さん自身が「この子はどうせ変わらない」とあきらめちゃうんです。とにかく「子どもを何とかしてほしい」という考え方が強いですね。そうじゃなくて、まずは自分が変わらなきゃいけない、ということなんです。しかも先ほども言ったように罪悪感が強いので、変わらなきゃだめだ、と思い詰めてしまうんです。変わるといっても、一気に変わらくていいんです。ほんのちょっとずつで構いません。中には「性格を変えるにはどうすればいいんですか?」などと質問をされる親御さんもいますが、そのままでいいんですよ、と答えています。 親御さんは罪悪感に縛りつけられて、一歩を踏み出すのが難しいということですよね。 浅井 そうですね、もう罪悪感の塊みたいになっています。「私の育て方がいけなかった」という言葉を口にする親御さんもいますが、それに対し私は「あなたのお子さんは欠陥品なんですか?」と聞き返します。じつはお母さんは自分の子どものことを話すとき、優しいとか素直とか、子どもの長所を口にしていることが多いんですね。さっきからこんなにお子さんのいいところを言ってるじゃないですか、というわけです。子どもの悪いところといいところを見るバランスを、いい意味で崩してあげることが必要ですね。 “成功”だけが結果ではない では反対に、不登校や引きこもりになっている子ども自身には、どのような特徴があるのですか。 浅井 子どもは親に反発しますが、じつは価値観が似ているんです。成績は良くなきゃいけない、いい大学に入らなきゃ認められない、そう思っている親御さんに育てられた子どもは、同じような考えを持っています。だからこそ反発するんです。 そして“まじめ”を通り過ぎて“まじめすぎる”子が多いですね。いろいろな物事に縛らりつけられてしまうんです。たとえば、教室には行けないけど保健室までなら行けるようになった、とします。周りから見れば大きな進歩ですよね。でも、自分がこうしている間に中間テストが終わってしまったとか、3ヵ月後には陸上競技大会があるとか、あれもこれもできない、どうしようと思い詰めてしまうんです。 そのような問題を抱えた親子に共通していることは、何かありますか。 浅井 失敗することをとても怖がります。たとえば親御さんにこんな課題を出すんです。「今週2回、お子さんとけんかしてください」。でもそれがなかなかできないんです。この傾向は子どもの方が強いんですが、とにかく物事を成功か失敗か、で考えてしまいがちです。「こうやったらどうなりますか?」という聞き方をしてきますから。けんかしたって失敗したって、そこから学ぶことはたくさんあるんです。これは余談ですが、女性の恋愛や結婚の相談を受けると、「まずはフラれてみましょう」と言っています(笑)。失敗を怖がらずいろいろ試してほしいですね。 仲間外れになりたくない子どもたち 子ども自身が相談に来る場合は、どのような内容が多いのですか。 浅井 圧倒的に友人関係の悩みですね。とくに中高生の女の子に多いのですが、彼女たちは仲間外れになりたくないんです。実際にあったことなのですが、5人の女の子が遊びに行く約束をしていた。でも1人が病気で行けなくなってしまった。そうしたら残りの4人はどうしたと思いますか? 計画を中止して、4人がお互いに顔を合わせないようにしたんですよ。4人で計画を実行しようとはしなかったんですね。行けない1人に遠慮した結果、こうなったんです。 たとえば、あるタレントのことを「あの人かわいいよねー」と友だちから言われたら、それと同じ意見でいることが仲間外れにならない条件なんです。仲間外れになりたくないあまりに他人に合わせて、本来の自分とは違うと苦しんでしまう、そんな子たちが増えています。 極端な例ですが、犬好きの人たちと猫好きの人たちがいて、犬好きの人からすれば猫なんて全然かわいくない、猫好きの人からすれば犬なんてどこがいいのかわからない。それでお互いに相手を攻撃するわけです。それは未熟だからなんですね。そうしないと自分を守れないんです。攻撃されると、相手と違うというだけで人格まで否定された気分になってしまうんです。 その仲間外れになりたくないという感覚は、わかるような気がします。ただ人にはそれぞれ個性がありますし、みんな一緒の意見だったら面白くないですよね。いまのお話を伺っていると、人間関係を上手に築いていくことの難しさを感じます。 浅井 人間関係の話題でよく出てくるのは、“自立”と“依存”ですね。でも、誰にも何もしてもらわなくても生きていける、これを自立と勘違いしてはいけません。これは自立ではなく“孤立”です。本当の自立というのは、危ないときに的確にSOSが出せることです。孤立していたらSOSが出せません。 ほかに“和”ということもよく言われますよね。自立と和は相反するようにとられがちですが、そんなことはありません。自立した人じゃないと和をつくれないんです。和があれば新しい意見を折衷できるんです。 よく生物学で依存というのが出てきますが、共存・共生は互いの存在が互いの利益になっていることですよね。寄生というのは片方が片方に依存して、寄生する方にだけ利益があり、寄生される側は不利益を被ります。そうではなく、やはりお互いが利益を得るような依存、お互いに支えられる関係をつくるのが大切だと思います。 やってみないとわからない 最後に、先生の元を訪れる相談者の方々に、共通しておっしゃりたいことはありますか。 浅井 いろいろな相談内容がありますが、共通して思うのは、だめだと思ったことに対して実際に何かを試しているのだろうか、ということですね。親子関係の話題のときにも言いましたが、失敗してもいいからそこから視野が広がるかもしれない、と考えてほしいんです。失敗を恐れる人は、失敗したことがありません。成功してる人は過去に失敗して、そこからいろいろなことを吸収し、結果的にそれが成功につながっているんです。やってみないとわからいといいますが、まさにその通りです。失敗を恐れずに、そこから学べることもあるんだということを知ってもらえたらいいですね。 |